文系PhDの日常

実学から遠い文系;博士号ほしい;海外留学中

日本の人文系・院生ライフ3:精神的不調

さて、日本の人文系・大学院生の日常を主に私の経験に基づいて回顧するシリーズ第三弾です。

ちょっとシビアな話ですが、院生生活の暗い面について。

人文系大学院で精神に不調を来す人は、本当にたくさんいます。私の周りも、先輩も後輩も同期も、何なら知り合いの先生も、精神的にダウンして研究・生活に支障をきたした人がいます。その程度は様々ですが、研究できない(「研究を始めると〇〇が始まる」のような症状)、学校に来られない等の理由で、研究生活にブランクがある人は結構いる印象です。研究自体を諦める人もいますし。幸いなことに、私の周りで命を絶った人はいませんが、「よくあるよね」というのが通説です。

ちなみに伝聞ですが、過労で亡くなったと思われる方もいらっしゃるそうです。この場合は精神的には大丈夫だったが、肉体はついていけなくなったようですね。

じゃあどうしてこうなるのだろうと考えると、個人的には精神的プレッシャーではないかなと思っています。プレッシャーがかかる要因は色々ですが、ざっくり言うと、外的な圧力と内的な圧力に二分にできると思います。

外的な圧力というのは、いわゆる「世間の目」に当たるかと思います。人文系で院生をしていると、30歳で卒業なんてフツーです。そもそも人文系は時間を長くかけて博士論文を書く伝統があるので、規定の三年では指導教官が卒業させてくれないというのも聞いたことがあります。博士課程に6年かけたりしたら、卒業時にはもう30歳前後になっていてもおかしくないですよね。ところが「30歳、無職」というのは世間体がよくない。学部を卒業して就職した友人たちはバリバリ稼ぎ、あまつさえ海外赴任とかしたり、結婚したり、子供が生まれたりしています。ところが「30歳、無職、貯蓄なし、未婚、子無し」って……しょっぱい、しょっぱすぎる。友人からは「何してるの?」と言われ、親からは「30歳までには自活しなさい」と言われ、親戚からは「そろそろ結婚しないと」と言われ、政府からは「年金よろしく」と言われ……どこにそんな金があるんだ!自分はいつまでも学生気分でも、周りは「もう30歳なんだから」と(無意識にかもしれないけど)圧力をかけ始める。これは結構辛いものがあります。

もう一つの内的圧力ですが、これは「(良い)研究成果をあげなばならん」というプレッシャーです。自分の今後のキャリアのために重要なのは、何と言っても、出版物リスト!受賞歴!です!そしてこれを長くするには、地道な積み重ねしかないわけです。地道に研究して研究成果を発表して、地道に奨学金・研究助成金の応募書類を書き、地道にコツコツ積み上げていく、そうすると一年後には論文が一本増え、運が良ければ研究助成が一つついているかもしれない。一方で、学費もバカにならないし、早く稼ぎたいから、4年から6年では卒業したいし、内規で何本論文を出版しないといけない場合もありますね。そうするとタイムリミットがあり、一方で出来るだけ質の良い研究成果をあげねばならない、そのためには当然時間がかかる、というジレンマに苦しむことになります。

この外的圧力と内的圧力のダブルコンボで参る人が多いように思います。特にご家庭の事情等で大学院を何年で終わらせなければならないか、タイムリミットがはっきりしている場合、かつ責任感が強い場合は自滅しやすいように思います。非常に限られたサンプル数で話していますが。

むやみに院生を増やすのは止めて、院生に給料を与えるシステムにすれば良いと思うのですが(諸外国にはありますね)、それかドイツみたいに教育を無償化するか。どうでしょう?どうせたくさん院生を増やしても、受け皿がないのだし……。

ちょっと暗い話になってしまいましたが、これをお読みになった方は、周りに院生がいたら「まだ大学いるの?早く〇〇しなよ!」と言うのではなく、「壊れ者注意」の心で接してあげて欲しいと思います。

今日はこんなところで。