文系PhDの日常

実学から遠い文系;博士号ほしい;海外留学中

文系は役に立つ?―吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』を読む

こんにちは、はたえるど@現役大学院生(博士後期課程)です。

 

最近、今後の大学の行く末について

大学は実践的な科目を教えるべきか考えてみたり

 

phdnonichijo.hateblo.jp

 

森博嗣氏の大学論について読んでみたり

 

phdnonichijo.hateblo.jp

 

色々思索にふけっていますが

またまた関連書籍を読みました。

 

こちらです。

 

 

これは記憶に新しい「文系学部廃止」の報道を切り口に、理系と文系の二項対立から考える文理それぞれの有用性について、そして今後の大学像について考える本です。

 

筆者の吉見氏は、「文系学部廃止」の報道は文部科学省が数年前から示唆してきたことであり、「安倍政権が突然横暴を」というイメージはメディアの扇動によると看破しつつも、日本における国立大学文系の現状が芳しくないために「文系学部廃止」の報道がリアリティをもって受け止められたと指摘しています。

この背景にあるのは「理系は役に立つが、文系は役に立たない」という一般通念。

 

確かに、この二項対立はもはや前提のように論じられることが多い気がしますね……。

 

そのうえで吉見氏は、「文系も役に立つ」と主張しています。

 

筆者はまず「大学の知が役に立つ」とはどういうことかという点について、「大学は、人類や地球社会の普遍的な価値のために奉仕する知の精度として発達してきた」ものであると述べています。

 

人類性とか普遍性、グローバル性は、大学にとって根本的なものです。つまり、大学は、今日的な用語で言うならば、何よりも「グローバルなエクセレンス(優秀なこと、長所)の実現」に奉仕しなければなりません。たとえ国に批判的で、国民的な通念とは対立しても、真にクリエイティブに地球的な価値を創造していくことができる研究者や実践家を育てることが、大学の社会に対する意味ある責任の果たし方なのです。

 

そのうえで、文系と理系それぞれの「役に立つ」の違いについて

・理系は、既定の目的に対する最適解を短期的に見つけ出す、目的遂行型・手段的有用性の「役に立つ」

・文系は、既存の価値観の批判・再考、新たな価値観の創造、多次元的な価値の尺度に耐えうる普遍性の追求を三十、五十、百年という長期スパンで行う価値創造的な「役に立つ」

であるとしています。

 

なるほど……ともすれば、「文系は役に立たないかもしれないけど、価値はある!」と自己弁護してしまいそうになるところですが、「文系も時間はかかるが役に立つ」という方向性ですね。

 

筆者がこの本でもう一つ追求しているのが、今後の大学像。

 

アクティブラーニングの話や吉見氏自身が実施しているゼミの話なども興味深いのですが、大まかなポイントだけまとめてしまうと

「現在の大学は、甲羅ばかり厚くする甲殻類。縦と横の背骨を通して旧来の大学を守っている五つの殻に孔を開け、新しい神経系を通そう!」

ということになります。

 

このとき

縦骨が突き破るのが「入試の壁」「学年の壁」「就活の壁」、横骨が突き破るのが「学部の壁」と「言語の壁」です。

 

具体的には

・「入試の壁」:高校の学びと大学の学び、及び学生の選抜と学びに中身の両面における連続性を担保する

・「学年の壁」&「就活の壁」:大学と社会とのつながりを結び直すビジョンの提案→“大学を「高校生」と「社会人」の中間にある通過儀礼的な組織から、人生の様々な段階で参加するビジョンやキャリアの転轍機に構造変換”する

具体的には:大学の出口管理(入るのは簡単、出るのは難しい)&人生で大学に入るタイミングは三回を想定(一回目:18歳~21歳、二回目:30台前半、三回目:60歳前後)&学年制の代わりに単位制を導入し、各科目の学修成果を厳密にチェックして成績評価する

・「学部の壁」:現行の学部制をやめ、メジャー・マイナーあるいはダブル・メジャー制度によって異分野の専門知を複線的に組み合わせて学べるようにする

・「言語の壁」:授業の英語化

 

これ、私は結構理に適った提案だと思うのですがいかがでしょう。

 

それに「VUCA(Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ))時代におけるアートの意義」みたいな本や記事をいくつか読みましたが

方向性が何となく共通しているように思うのですがいかがか(って言われても困ると思いますが……)。

 

こうゆう先行き不透明な不安的な現代だからこそ、長期的な視点で価値を創造できる人材が求められる……そういうときこそアート!というのがトレンドのようですが、結局は文系学問全体に言えることのようですね。

 

 

予算のない、お先真っ暗感のある文系学部出身の私は、結構勇気づけられた一冊でした。

 

文系を学ぶ人には文系学問を学ぶ意義を教育する機会があっても良いように思うなあ。

 

 

今日はこんなところで。