文系PhDの日常

実学から遠い文系;博士号ほしい;海外留学中

読了本!『伊藤くん A to E』柚木麻子

柚木麻子さんの『伊藤くんA to E』を読み終わりました。

うーん、何読もうかな、という時の安全パイとして私の中で不動の地位を築きつつある柚木さん。Kindle版が199円という激安だったので購入しました。

 

 

伊藤くんという、自分大好きで虚栄心の塊のような男の周囲にいる女性を描いた話。

柚木さんが女性の書き分けをすると、それぞれ「ああ、こういうタイプの女性いる」という現実感がありつつ、他の登場人物と混同しないようキャラ立ちしているので読みやすいですね。

 

童貞・処女ということがテーマの一つのように思うので、結構エロい作品でしたが、ラストは哲学的でした。伊藤くん、キモ……と思いながら、登場人物の女性たちが伊藤くんと縁が切れるたびに「良かったね」と読み進めていましたが、最後に伊藤くんから逆襲のように突き付けられる生き方はなんだか頭に残る。

まあね、しょせん金持ちのボンボンの戯言と言うのは簡単ですが、じゃあそれが間違ってるかって言われたらそう簡単には言い切れないし、だからって相手を笑う権利もないよねっていう。

 

 

そういえば、あまりに柚木作品を読みすぎたせいか「おや、このモチーフは他作品で見た気が……」というものがいくつかありましたね。

脚本家の矢崎の片付けられない、自分からは何もしない父親は、『ナイルパーチの女子会 (文春文庫)』の翔子の父と重なる……とか。

過去の栄光にとらわれ、自分が必死のパッチで努力する姿を決して見せたくないあまり、がんじがらめになって動けなくなる脚本家、矢崎は『けむたい後輩 (幻冬舎文庫)』の栞子みたい。

というか、行くべき方向は分かっているのに、自意識が邪魔をして動けなくなったり、回り道をしてしまう登場人物をよく見る気がするかな。

 

 

こういう色々なタイプの女性が登場するような柚木作品を読みたいという方は『早稲女、女、男 (祥伝社文庫)』も面白いと思います。

でもこの作品は「○○大学に典型的な(あるいはそう思われている)女性」というイメージを利用して書かれているので、賛否両論あると思います。「そんなふうにステレオタイプ化しないで欲しい」という人もいるでしょうし、首都圏の大学のイメージが分かる人向けの内輪受けという感じもする。

 

それでもご興味ある方は是非。